米澤穂信『クドリャフカの順番』(角川文庫)

米澤穂信『クドリャフカの順番』
を読んだ。
何よりもキャラクターがこなれてきたように思う。ほろ苦い青春モノとしてはシリーズ第1作『氷菓』に軍配が上がる。推理小説としては第2作『愚者のエンドロール』
だろう。それでも、読んでいて一番楽しかったのは、この3作目かもしれない。個人的な嗜好が大きく影響している可能性はある。何を隠そう、ぼくは学園モノ好きだ。男臭い学生生活しか知らないぼくにとって、学園モノの世界は永遠の憧れなのである。そして、学園祭をテーマにしたこの物語は、最高の学園モノとしてぼくの記憶にしっかりと刻み込まれた。嗚呼、何と羨ましい学生生活であろうか!
ひとつだけ問題があるとすれば、これ単体で読むと解らないことが意外に多い点だろう。前2作を読んでいないと、何やら食い足りない気持ちになるに違いない。もちろん、ミステリ的な要素をメインに考えるなら、これはこれでキッチリ完結している。ただ、彼らの内面に与えた過去の物語は、この物語の時間軸でも重要な意味を持ち続けている。キャラクター小説的な愉しみがひとつの特徴である以上、キャラクター形成の過程を飛ばすのは大きく愉しみを殺ぐことになる。純粋にミステリだけを愉しむという手はあるけれど、それだけで本作を評価することは難しい。
前2作と打って変わって、レギュラーキャラクター4人による多視点の1人称で物語は進む。これが学園祭という祝祭の雰囲気を描くのにとても貢献している。従来通り奉太郎の1人称だけで進んでいたら、この雰囲気はちょっと出せなかったろうと思う。また、これまで光の当たることのなかった主要キャラクターたちの内面が、実に活き活きと描かれている。これも学園モノとして非常にポイントが高い。実をいうと1作目を読んだときは、彼らのあり様が軽度のオタク的コミュニケーション不全を気取っているようでどうにも好きになれなかった。そんな印象はもうない。
もちろん、ミステリとしても十分に面白い。解決篇は少し物足りない部分もあったけれど、その過程は祝祭的喧騒ともマッチして毒のない爽やかなミステリになっている。それに解決が弱いとはいうものの、明かされる動機のステキさがそれを補って余りある。これまた青春の甘酸っぱい味が溢れていて、実に好ましい。見事なまでに柑橘系である。犯人の屈折の仕方が好すぎて困る。彼の繰り出す余りに迂遠なコミュニケーションに、ちょっとクラクラきてしまった。どう考えてもリアルではないのだけれど、青春の心象としてはとてもリアルだといわざるを得ない。
これはもう、学園モノ好きにはこたえられない1冊だ。
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・米澤穂信『氷菓』(角川文庫)
・米澤穂信『愚者のエンドロール』(角川文庫)
・米澤穂信『クドリャフカの順番』(角川文庫)
posted in 08.06.12 Thu
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I graduated Otis Parsons School of Design and am at present operating on building an on the net discussion board for those doing work from the business to join in concert.
posted in 10.10.13, by Fashion Design