アンソロジー『時代小説 読切御免第一巻』(新潮文庫)
アンソロジー『時代小説 読切御免第一巻』を読んだ。
実をいうと時代物には妙な苦手意識があって今まで極力避けて通ってきた。小学生時分からの歴史嫌いであり、生粋の歴史音痴である。お陰でこのジャンルは、ぼくにとってはいまだニューフロンティアである。そこに新たな愉しみを見出すべくついに手を伸ばしたというわけだ。
親しみのないジャンルに手を出すときは、とりあえず定評ある名作か、アンソロジーを読むことにしている。今回読んだのは新潮文庫から出ているシリーズモノのアンソロジーで、現役人気作家の短編が気前良く収められている。この巻の作家陣は次の通り。
- 北方謙三
- 宮部みゆき
- 小松重男
- 安西篤子
- 南原幹雄
- 皆川博子
- 船戸与一
たとえ読んだことはなくても、よく聞く名前ばかりだ。こうしてみると、必ずしも時代物イメージの強い面子ばかりでもない。お陰でぼくのようなジャンルにに不案内な人間には取っ付き易かった。
今回の収穫は何といっても安西篤子と南原幹雄だ。
どちらも初めて知った。安西篤子はとにかく文章が好かった。訥々とした語りでじわりとくる。読み易いのだけれど力があって、少々重い目の余韻を残す。南原幹雄は展開がミステリ的で親しみ易い面白さ。本格推理的な読みをすればアンフェアといわれかねない描写があったりもするけれど、それを疵と呼ぶには及ばないと思う。
もちろん他にも面白い話はあったけれど、既に他作で知っている作家だったりもしたので、先の2人ほどには印象に残らなかった。それよりも気になったのは、各作品の後に付された、ちょっとしたコラムのようなものである。これがなかなかに面白い。本編の時代や風俗に絡めて、その周辺の話題が紹介されている。これが下手に解題、解説の類がついているよりもずっといい。
こういうプラスアルファの要素もアンソロジーの良さかもしれない。
posted in 05.02.01 Tue
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