宮台真司・宮崎哲弥『ニッポン問題―M2:2』(朝日文庫)

宮台真司・宮崎哲弥『ニッポン問題―M2:2』(朝日文庫)宮台真司・宮崎哲弥『ニッポン問題―M2:2』を読んだ。

前作『M2 われらの時代に』に続く対論集第2弾である。とにかく凄い。半分くらいは何をいっているのか分からない。なのに面白い。熱いリベラリスト宮台とニヒリスティックなコミュニタリアン宮崎という妙なキャラ設定も読み物として愉しい。

そして、ふたりの共通した態度として、イマドキの論壇をケチョンケチョンに扱き下ろし盛大に挑発するという、多分に意識的な言動もすこぶるエンターテイメントしている。お陰で、これだけ読者に教養と知識を要求しておきながら、面白い時事評論としてサックリ読める。

そんなわけだから、サックリ読めるのは読めるのだけれど、社会学を中心とした古典に造詣がないと相当部分を読み落とす。過去の学問的遺産をフルに活用した、基本に忠実かつ正統的な論理展開で時事を語っているのに、そのありがたみが分からない。

掲げられるお題はイチイチ身近な問題ばかりだ。

だから、とっつきやすいことは間違いない。天皇問題だとか小泉政権だとか学力低下だとかサブカル周辺にまで話題は及ぶ。基本的に宮台節に宮崎哲弥がのっかっていくような展開が多いこともあって、下手に議論が錯綜しないのも救いだろう。

補助線くらいの意味しかないとはいえ、註がふんだんに挿入されているのも多少の助けにはなる。もちろん、最終的にはそこから原典にあたるくらいの気概がないと十全に理解することはできない。とはいえ、エッセンスを感じ取りつつ愉しむ分には十分な作りかもしれない。

徹底して論理的に思考し、ドン詰まりまで絶望する。

世間や社会のレベルで語られるヌルい自己や絶望を全否定し、社会を突き抜けた先の世界を感得せよと説く展開は、少し前に読んだ『サイファ覚醒せよ!―世界の新解読バイブル』にも共通する思想だ。その他の話題でも不徹底のヌルさを糾弾するシーンは多い。

徹底した閉塞と絶望について語られる段で、古谷実の漫画『ヒミズ』が取り上げられていたのは印象的だった。連載時にはつまむ程度にしか読んでいなかったのだけれど、こうなると読みたくなってしまう。漫画なら丸山眞男よりはとっつき易い。

いずれにしても、ふたりがいかに広範な知識をもってそれを商売にしているかが分かる1冊だった。勉強に無限の時間を割ける学生ででもない限り、今更すべてを勉強するのは難しい。ただ、興味の扉は無数に開かれている。巻末には読書案内なんて心憎いオマケまで付いている。

脳味噌に刺激を与えるには恰好の本である。

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