宮崎哲弥『新書365冊』(朝日新書)

宮崎哲弥『新書365冊』(朝日新書)宮崎哲弥『新書365冊』を読んだ。

これはブックガイドの類なのだし、読書とはいわないかも知れない。ともあれ、新書流行りで何を読んだら好いものやらさっぱり分からない。何を読んでもそれなりに面白いとは思うけれど、その中でもやっぱり当たり外れはある。

できれば面白い本に当たりたい。

何しろ、生涯に読める本はそう多くない。もちろん、楽しめるかどうかは相性もある。だから、他人の評は必ずしもアテにならない。だから、ガイドに付された評価は参考程度に考えておく。それよりも、どのように紹介されているかが重要である。

その点、この宮崎哲弥のガイドは好い。何といっても、読んでいる冊数が尋常ではない。つまり、より多くの中から目に留まったものを選んでいることになる。生涯3冊しか本を読まなかった人の推薦よりは、1万冊読んだ人の推薦の方が、当たりを掴む可能性は高そうである。

この本自体は雑誌連載の再編集版である。だから、時期的には少し前に出版された本が対象ということになる。それにしても、連載中、毎月出版される新書を全冊読んでいたというから凄まじい。60冊から100冊近く読んだ月もあるらしい。

しかもその中から、これは、というものを選び出して書評を付けるのだから、ただ漫然と流し読んでいるわけではない。無論、批評家としての選書眼を問われる仕事だから下手なこともできない。だからこそ、買ってみようと思ったわけである。

これが実に分かり易いブックガイドになっている。

その本の社会的な意味や業界的な立ち位置などが、しっかりと明記されていて、果たして自分のレベルに合った本なのか、あるいはより入門的な本に当たるべきなのか、といった適性までちゃんと推し量ることができる。実に親切な作りである。

しかも、時事や周辺事情に絡めるなど本自体に興味が向くような話題作りがなされていて、まるで知らないジャンルの書評も愉しく読むことができる。本というのは読み出すと近視眼的に信じ込んだり反発したりするものだけれど、一歩引いた冷静な視点を与えてもくれる。

優れた点はどこか、欠点はどこか、何が新しいのか、どういう流れを汲む思想なのか…そうした情報があちこちに散りばめられている。これは使える。数珠繋ぎ的に興味を引き出してくれる。宮崎哲弥の書評というのは初めて読んだのだけれど、こんなに巧いと思わなかった。

読み終えると、本が付箋だらけになっていた。

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