山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字(上)』(光文社新書)

山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字(上)』(光文社新書)山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字(上)』を読んだ。

元々買うつもりのない本だった。同著者の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』がバカ売れしていた頃、そんなにも凄いのかと立ち読みして「ああ、当たり前のことが書いてある」と思った。読みやすいけれども、新しい発見は少なそうだと踏んだわけである。で、2匹目の泥鰌が泳いできた。今度はさらに踏み込んだ話なのかと、また立ち読みしてみた。新書は立ち読みせずに買うのが怖い。何しろ、最近はえらくキャッチーな書名が氾濫している。ぼくはお金持ちでも時間持ちでもないから、できるだけ面白い本を買って読みたい。やっぱり買わなかった。

つまらなかったということではない。面白そうではあるのだけれど、「そこから先が知りたい」というところで話が終わっている、そういう印象があった。少し考えれば分かるような話が多く思えた。また、分からなかったとしても、示される回答に新しい閃きは感じられなかった。相変わらずすこぶる読みやすい本だったから、少し暇なら立ち読みで読破も不可能ではなかったろうけれど、それは流石に止めておいた。そんな本を買う気になったのは、結局はタイトルのせいである。それも続編のタイトルである。これを思う壺という。完全にやられた。

『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』という続編が書店に並んでいるのを見て、「そこから先」が書かれているに違いないと咄嗟に思った。思った瞬間、2冊まとめて買っていた。不覚にも立ち読みするのを忘れていた。最近の新書は本当に巧いタイトルをつける。そして、この2冊に関しては騙されたとは思わなかった。何しろ、書名そのままのことが書かれている。「食い逃げされてもバイトは雇うな」という理由は簡単だ。ぼくでもタイトルを見ただけで分かったし、きっと分かった人は多いだろうと思う。それはそれでいいのである。

これは下巻に向けての伏線の書である。だから、個人的には会計に絡む話題以外、目新しい話はなかった。進んで数字を巧く使おうという意識を持ってはいないけれど、巧く使われた数字を鵜呑みにするほどぼくはお人好しではない。ぼくは曲がりなりにも広告に関わる仕事をしている。広告表現について見聞きすることは多いし、自らコピーを捻り出さねばならないときもある。また、広告を眺めているとお金の流れにもある程度敏感になる。いや、それは正しい知識を得るというよりは、勝手に裏を読み始めるといった方がいい。要するにスレてくる。

それでも、とりあえず読む。そして、表の視点を再確認する。この本ではここまででいい。もちろん、書名を見て「なんで?」と素直に思った人は是非読むべきだ。正しくコストを考えられるようになれば、少なくとも、いつの間にか手元の金が消えているなんてことはなくなる。何に使っているつもりもないのに一向に金が貯まらない。そんな人にはとても役に立つ話だろう。そして、世間はなかなかに狡猾だということも見えてくる。著者の実感を信じるなら、数字にナイーブな人というのは相当に多いらしい。自覚があるなら読む価値はある。

ともあれ、世に溢れる数字の効用が分かりやすく整理されている。これが会計的な考え方の土台になる。ちなみに、ここでいう会計的というのはキチンと損得勘定ができるというほどの意味である。それができているという人には食い足りない内容だろう。実際、軽い。けれども、これには続編があるのである。きっと、そこで新しい視点を与えてくれるはずだ。書名をみれば明らかである。だから、この本の書名を見て、「当たり前だ」と思ったぼくのような人間こそ、読むべきなんだろう。すでに書名が「当たり前ではない」といっている。

期待の続編についてはまた後日。

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