鯨統一郎『新・世界の七不思議』(創元推理文庫)

鯨統一郎『新・世界の七不思議』(創元推理文庫)鯨統一郎『新・世界の七不思議』を読んだ。

いわゆる歴史の新解釈モノで、シリーズ前作『邪馬台国はどこですか?』は著者のデビュー作品集だ。いまだ解明されていない歴史上の謎を、一介の雑誌ライターが飄々と解き明かしてしまう。しかも、寂れたバーでレクチャーされた内容だけを頼りに。実に痛快な趣向のシリーズだ。

今回取り上げられている謎はアトランティス、ストーンヘンジ、ピラミッド、ノアの方舟、始皇帝、ナスカの地上絵、モアイ像の7つ。歴史オンチのぼくでも、みんな名前くらいは聞いたことがある。歴史解釈の意外性と妥当性がウリの作品ではあるけれど、ぼくのような「"聞いたことがある"レベル」の人でも十分楽しめるから心配はいらない。何しろ、謎を解き明かす安楽椅子探偵役が「"聞いたことがある"レベル」の人なのだ。各登場人物の役割もはっきりしていて、レクチャー役の歴史学者、資料係のバーテンダー、オブザーバーに古代史の世界的権威である大学教授といった具合だ。

4人の軽妙を通り越して少々スラップスティック気味な会話が主となって話は進む。彼らの楽しげな歴史談義を聞く内に、何が謎で、現状どういった解釈がされているのか、といった基本事項がなんとなく解かったつもりになれるのも著者の腕がいい証拠だと思う。確かに日本史を題材にした前作に比べると若干大味な印象はあるけれども、ぼくは歴史マニアではないし、この本は歴史の研究書ではない。しかも、開示される真相(新解釈)はどこからどうみても意外で、かつ腑に落ちるものばかりとくれば文句はない。

コメディなのにスリリング。絶妙だと思う。

ところで、最後にちらりと囁かれる日本観は、知の巨人明石散人の仕事を思わせるものだ。この着眼に興味を持った方は彼の著作を是非。特に講談社からでている鳥玄坊3部作は強烈だ。それはそれは物凄いスケールのお話で、激しく、一際激しくお勧めの逸品。

ただし鯨統一郎も明石散人も難しいことを考えて読んじゃいけません。

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