“超「実用」ワナビー養成ギプス”
勝間和代『読書進化論』(小学館101新書)

books081018.jpgたった一冊の本で、
読者×著者×販売者の利益を最大化する。

勝間和代『読書進化論』はそれ自体がとても戦略的な本だ。本から利益を引き出す方法を説きながら、この本自体がそれを実践するという、みごとな二重構造になっている。著者の言葉を借りるなら「ポジティブ・フィードバック・ループ」を意識的に起こす仕掛けである。内容は基本的に著者自身の実績がベースになっている。つまり、著者がどのように読書し、読者から著者になり、どれほどの成果をあげてきたかが具体的に語られる。これは本に説得力を持たせると同時に、成功者としての著者を強くアピールする。著者が読者の憧れとなり、目標となるのである。

「勝間和代から学びたい」、或いは「勝間和代みたいに成功したい」。それが本書を有効利用しようとする読者にとって、最も大きな動機のひとつとなる。勝間ワナビーになることから始まるのである。これは決して悪いことではない。こうした自己啓発系の本を活用するには、まず素直に耳を傾けること、そして少しずつでも行動に移すことが肝心だ。その点、売れる本を出し続けている著者に抜かりはない。そこには、参考にすべき本の書名や著者名、有用な本の選び方、効果的な本の読み方など、すぐにでも行動に移せる、極めて具体的な指針が示されている。

これはとても効果的な著者自身とその著作のプロモーションであるともいえる。勝間本をあまり読んだことのない読者であれば、既刊の著作や、著者推薦の本に手を延ばすことが、行動の第一歩になるだろう。行動する気になったということは、勝間本が性に合ったということでもある。既刊本を読むことはきっとプラスになる。つまり、読者にとっても著者にとっても本書がプラスに働いたことになる。また、推薦本が売れることは、読者自身の成長と共に、著者の属するマーケットの活性化や、著者の活躍するフィールドの拡大にひと役買うことにもなるだろう。

そして、本書は読書論を超える。インプットからアウトプットへ、読者から著者への進化が語られる。むしろ、ここからが著者の本領といってもいい。インプットはいくらあってもそれだけでは成果を生まない。インプットをいかにアウトプットに繋げ、いかに成果をあげるかが本当の読書の効用である。だから、決して「著者になる」ことが目標として語られるわけではない。それすらも、さらなる「ポジティブ・フィードバック・ループ」を起すための手段なのである。いきなり本は出せなくてもブログなら誰でも始められる。書き方の要点もちゃんと書いてある。

とはいえ、いきなりブログを書けだとか、著者になれだとかいわれても、まだ少し難しいかもしれない。が、ここにも最初の一歩は、ちゃんと用意されている。このエントリーでも参加している「勝間和代と読書の未来を語ろう」というキャンペーンである。これもまた、読者、著者、販売者三者の利益を最大化するための仕掛けのひとつである。読者はアウトプットの題材と場を、著者と販売者は読者からのフィードバックとコンテンツを手に入れることができる。多くの読者がこれに参加することはインターネット上に本書への接点を増やすことにも繋がるだろう。

読書の効用を説きながら実践もし、マーケティングまでする。ここから学べることは多い。

related entry - 関連エントリー

trackback - トラックバック

trackback URL > http://lylyco.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/487

comment - コメント

このたびは、小学館101新書『読書進化論』(勝間和代著)の「ブログ感想文企画:勝間和代と読書の未来を語ろうキャンペーン」にご応募いただき、ありがとうございました。厳正な審査の結果、”超「実用」ワナビー養成ギプス”はセレクト賞に決定いたしました。おめでとうございます。本の仕掛けを見事にあばき、著者の成功体験の位置づけを的確に評価してくださったこと、そして感想文の文章・構成ともに見事な仕上がりであることに審査員が注目させていただいた結果です。
 2009年1月23日(金)18時30分より、小学館にて、「勝間和代と読書を語る会」を開催いたします。ご出席は可能でしょうか。詳細は、追ってのご連絡となりますが、上記アドレスへ一度ご連絡いただけますか。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
 また、読書進化論サイト上にて、受賞作品の紹介を行う予定です。ご了解いただけますと幸甚です。小学館出版局 小川美奈子

コメントを投稿

エントリー検索