中島敦『李陵・山月記』(新潮文庫)

中島敦『李陵・山月記』(新潮文庫)中島敦『李陵・山月記』を読んだ。

ぼくなどがどうこういう作品ではない。読書というよりは鑑賞のために買い直した。ネットで「山月記」の文字をみつけて久々に読もうと思い立ったはいいけれど、何故か家にあるはずの本がなかった。時々、こういう肩肘張った文章が読みたくなる。意味を追うのではなく、言葉の流れに心を乗せるような気持ちである。ぼくに純文学志向はない。むしろ、エンターテイメント好きである。まあ、純文学もエンターテイメントの一種だと思っているので、ぼく内部ではこの分類は意味を成さない。あくまで、一般に想起される純文学という意味で、である。

「山月記」を教科書で読んだのが何年生だったか覚えていない。ただ、読んだことだけは覚えている。教科書にも荒唐無稽な話が載るものだ、というようなことを思った気がする。何しろ詩人になろうとして虎になるのだから、これは荒唐無稽以外の何物でもない。妄執とは、げに恐ろしくも哀しきものよ、などと感じ入るには当時のぼくの精神は少々幼すぎた。というより、自力では巧く文意を汲めてすらいなかったはずである。恐らくは、教師の解説でなんとか意味を知ったような具合だったろう。今にして思えば、教科書も凄いものを載せる。

中島敦という人は文才がありすぎる。というより、文学的な知識がありすぎるのか。なまくらな言葉に慣れたぼくのごとき現代人には、些か言葉が難しい。注釈なしで読み通せる気がしない。新潮文庫が旧字でなくて助かった。この上字画を増やされたのではたまらない。とはいえ、本当は旧字で読んでこその藝術だろうとも思う。文意を伝えることのみに資する文章ではない。芸術作品の見た目を変えちゃダメだろうという話である。ごもっとも。もう少しこの言葉の舞に慣れれば、ぼくとてチャレンジすることにやぶさかではない。いずれ眺めて楽しもう。

なお、適度に薄くて軽い本書はその品格故に座右の書にも最適である。

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