國定克則『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』(朝日新書)

books080328.jpg國定克則『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』を読んだ。

会社で堂々とお金の話ができる。自分の給料をある程度の根拠を持って自己評価できる。勤め先の会社の価値を正しく判断できる。優良な投資先になんとなく目星が付けられる。漫然と社会で暮らしていてもこうしたスキルは身に付かない。実際、付いてこなかったぼくがいうのだから間違いない。とはいえ社会人である以上、お金の動き無自覚でいるのも気持ちが悪い。周囲に詳しい友人などはない。まさに素人にうってつけの入門書だ。素人というのはつまりぼくのことだ。財務のザの字も、会計のカの字も知らない。簿記なんてものには触れたこともない。

そんなぼくがざっと財務3表を斜め読みし、大枠を掴めるようになる。初めて読んだ本がこれなものだから、財務諸表の何が難しいのかねとか思ってしまったくらいだ。いや、相当に簡略化された説明だということは分かるのだけれど、これで流れが見えるのである。その流れをみせるため、お金に動きのあるたび逐次財務諸表に反映していく。仮想リアルタイム決算である。だから、これは実務のための本ではない。表層ではなく本質を伝えようとしている。会社のお金の流れを知り、会社の実体を推測する。たとえばそんな視点を手にするための礎となる本である。

とにかく説明が具体的である。ショッピングサイトを立ち上げた経営者というペルソナを使って、創業から順に資金の流れを追っていく。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を個別に見るのではなく、書名にある通り一体のものとして扱う。3表の繋がりを明確にしながら、いちいち実際に計上していくのである。いやというほど丁寧に追っていくので、置いていかれる心配はほとんどない。平易ながら時価会計や減損会計なんかもカバーしているし、果ては、自社株買いやらM&Aなんて話題にまで触れている。これらが地続きになっていて実に解かりやすい。

PLやらBSやらが何を表しているかすら知らなかったのだから、これはもうもの凄く勉強になった。枝道に入り込まず全体を俯瞰する。これって案外、実務のプロフェッショナルでも難しいことなんじゃないか。お陰で、この手の話題を掘り下げる強力な足掛かりになった。もちろん、ぼくは財務のプロを目指しているわけではない。だから、掘り下げるというよりは、掘り広げるといった方がいいかもしれない。今年の裏目標「マネーについて知る」の一環として、会社マネーをもう少し齧ってみる気になった。優れた入門書はジャンルへの興味を一層深めるものだ。

お金に疎いと自覚している同志諸兄に、一際激しくお薦めしておく。

related entry - 関連エントリー

trackback - トラックバック

trackback URL > http://lylyco.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/289

comment - コメント

コメントを投稿

エントリー検索