西尾維新『零崎軋識の人間ノック』(講談社ノベルス)
西尾維新『零崎軋識の人間ノック』を読んだ。
殺人鬼集団を主人公とした人間シリーズの2冊目だ。いわゆる戯言シリーズの番外ということになるんだろう。オフィシャルな2次創作みたいなものである。よって、シリーズ読者以外には徹頭徹尾楽しめない作品だと思う。その分、ファンサービスは盛大だ。
戯言というのはやたらと変な名前のキャラクターを登場させては、コロコロと死なせてしまうイカレたシリーズだった。それもアニメチックな萌え少女がほとんどで、竹というイラストレーターの挿画も手伝ってシリーズ完結後も死人のファンが全国各地で増殖中らしい。
そんな彼女らの若かりし頃、否、幼かりし頃が描かれるのがこの番外シリーズなのである。なんとファン思いのシリーズだろう。しかも、主要登場人物の多くが小中学生ときている。ついでに玖渚友の半裸生活まで描かれるのだから、幼女好きにはたまらない作品である。
そんな過剰なファンサービスに彩られたこの作品は、看板を背負ってるにも関わらず零崎軋識がさほど活躍しない。もちろん、これは必然である。彼は視点人物として、人気キャラたちの過去を紹介する。そういう役目を負っている。ある意味、可哀相な主人公である。
それでも殺人鬼集団「零崎一族」の中でツートップの一翼を担うくらいだから、芸はなくともケンカは強い。それなりにキャラも立っている。でも、それだけである。両シリーズを通して一番普通な男だといってもいいかもしれない。それがかえって新鮮だ。
ストーリーはまあ、どうでもいい。良い話でも心に残る話でもない。来月の今頃には、きっとキレイに忘れている。『ベルサイユのばら』は心に残っても、外伝はすぐ忘れ去られるのと同じことである。2次創作クオリティの限界であり、宿命である。もちろん、それでいい。
何しろファンなら絶賛のデキである。
それはさておき、いくらなんでも本体価格1,200円は酷い。ボリュームに比して高すぎる。つい買うのを躊躇ったほどだ。この程度の厚さでこの価格は紛う事なきボッタクリである。トレーディングカードなるものが6枚付録で付いてくる。きっと、そのせいだろう。
正直、要らない。
トレーディングカードなしのバージョンも作って欲しかった。そうすれば迷わずそっちを買ったのに。こんな余計なもののために貴重な読書予算を費やしたのかと思うとなんだか悲しい気持ちになる。西尾作品は絵があって初めて成立する小説だということなんだろう。
次も余計なオマケ付だったら、もう買わないかもしれない。
posted in 06.11.09 Thu
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