梅田望夫『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』(ちくま新書)
梅田望夫『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』を読んだ。
タイトルには芸がないけれど、中身は凄い。
どうも『バカの壁』以来の中身の薄い新書ブームには辟易していたのだけれど、これは久々の大当たり。漠然と感じながらもきちんと体系化して考えてこなかった「今」が、シリコンバレーやウェブの世界を通して活写されている。
まず、ウェブで起こりつつあるパラダイムシフトが、とても解り易く説明されている。しかも、ウェブの世界だけに閉じた議論ではない。そこにこの本の本当の意義がある。提示されているのは、実にエキサイティングな世界認識の方法論である。
Googleに代表される新世代のネットベンチャーは、一般に中身が見え難い印象があるんじゃないかと思う。どうやら広告収入で急成長しているらしいなんて噂を聞いても、Googleのどこにそんなメディアとしての力があるのかよく分からない。
検索エンジンが今の潮流を決める鍵だったといわれても、サービス業として彼らの活動を眺めてしまうともういけない。だって、タダじゃないか、ということになる。しかもGoogleのトップページにもどこにもバナーがついてるわけじゃない。
モノもサービスも売らず、広告スペースも持たない。
それでもお金が動く。その仕組みが、とても納得の行く形で示されている。キーとなるのは"ロングテール"と呼ばれる新しいマーケットである。それはテクノロジーによって初めて意味を持ち得た、未だ完全には拓かれてない未知の市場である。
Googleはその未開の地に、強力な頭脳と技術力を持って乗り込んでいった。その働きが、インターネットの世界に新しい経済圏を生み出すに到り、Yahoo!やMicrosoftといった先駆者たちを、物凄い勢いで追い抜いてしまった。
たった7年で時価総額20兆円。
シリコンバレーにあっても破格の急成長である。そのダイナミズムを支える思想は広大無辺であり、それだけに一見荒唐無稽である。けれども、それを夢物語として片付ける知性や感性は、おそらくこれから起こる変化の兆しを見誤る。
Web2.0の世界はまだ始まったばかりである。それは開かれた情報と知の集積によって、新しい知の体系がほとんど0コストで生み出される世界である。そこにどんな新しい経済原理が生まれ、どんな地図が描かれるのかはまだ分からない。
世界を眺める新しい視点を手に入れる。
この本はそのための格好の手引き書となるはずだ。
posted in 06.06.04 Sun
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