栗田有起『ハミザベス』(集英社文庫)
栗田有起『ハミザベス』を読んだ。
なんだか新しい。
真摯で深刻かもしれない題材を、真摯で深刻かもしれないけど、でもね…という絶妙なバランスで綴っている。何故か笑って読めてしまう。うまくはいえないけれど、そんな感じの作品だった。表題作と併録の「豆姉妹」、どちらもその感触は変わらない。これがこの著者の作風なんだろう。
とても得難いバランス感覚だと思う。
このふたつの作品には、それぞれの主人公にとってキーパーソンともいうべき変人さんが出てくる。彼女たちの言動や行動は、どう考えても一般的じゃない。とりあえず、変わっていることは間違いないと思う。ただ、共感できなくはない。これがまた絶妙。
ああ、変な人がちゃんと生きてるなあと思いながら読んでいて腑に落ちた。このふたつのお話に出てくる変な人たちは、結局のところ自分をしっかりと持ちすぎてるから面白いだけなんだと。そして、その変な人が、ごくごく自然に主人公たちの今やこれからに影響を及ぼしていく様が、読んでいて物凄く心地好い。
そして、さらに面白いことに、ユーモラスな笑いを提供するのは、そんな変わった人たちではない。その役を担っているのは、どちらかというと主人公や、その他の普通の人たちなのだ。このあたりの巧さは、天性のものかもしれない。
ファンになった。
他の作品も読んでみたいと思う。
posted in 05.07.28 Thu
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