林望『リンボウ先生の閑雅なる休日』(集英社文庫)

林望『リンボウ先生の閑雅なる休日』(集英社文庫)林望『リンボウ先生の閑雅なる休日』を読んだ。

この本を手に取ったのは、全くの偶然といっていい。いつもは現行の本を読み終える前に次の本を買い置いておくのだけれど、このときはどうもタイミングが合わず、買う前に読み終えてしまった。書店に行ったはいいけれど、電車の時間が迫っている。選んでいる暇はない。平置きの一番端にあった文庫本を取ってレジに向かった。

結果、好い本に当たったと満足している。

内容は、多趣味、博学の著者によるエッセイ集。読んだのは初めてだけれど、林望という名前は普段からよく目にしていた。気にはなりつつ、何やら読者層にスノッブな匂いがして避けていたようなところが、正直あった。これをして偏見という。実によろしくない。本当にリンボウ先生のファンであれば、スノッブなどとは対極にあることは間違いないのである。そんなことは少しでも読めば分かることだ。

確かにリンボウ先生の暮らしぶり、趣味、学識の豊かさは、まかり間違えば厭味にもなろう。けれども、リンボウ先生は努力の人、意志の人であるらしいのだ。文中に垣間見えるそういった一面がまた、著者の大きな魅力になっている。恵まれた環境と多忙な生活の中に、意志の力で"閑雅"を求める。その中で培われた哲学が、決して大上段に構えない視線と筆致で綴られている。楽しく読めて、得るところも多い。

結局のところ偏見で一番損をするのは自分自身なのだ。

ともあれ、書店での偶然に偏見で曇った目を濯がれ、新しい楽しみが増えたのは幸運だった。心の楽しみリストに林望の名を追加。これからも折に触れてその著作に手を伸ばそうと思う。

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