いしかわじゅん『業界の濃い人』(角川文庫)

books050602.jpgいしかわじゅん『業界の濃い人』を読んだ。

著者はもちろん、テレビに出ればダンディで物腰も柔らかく、いつも笑顔でズビズバと厳しいことを言い放つ、あのいしかわじゅんだ。漫画家で作家でテレビや舞台にも顔を出すとても多才な人だ。これでメジャーじゃないと言い張るのは難しいけれど、何故かマイナーなイメージがつきまとう人だ。考えてみればぼくだって「BSマンガ夜話」以外の印象はそれほどない。絵を見ればそれと分かる程度には知っているのに、ろくに漫画作品を読んだことがないのだ。それはそれで不思議な話だ。

けれども、この本を読んで理由が分かった。

いしかわじゅんは趣味の人なのだ。徹頭徹尾趣味の人だから、やりたくないことはやらない。それで食っていける才能に恵まれているのだ。だから、当然のように仕事を選ぶ。その選び方がどうやら随分と偏っているらしいのだ。というより、メジャーな舞台にあがっても、きっと好きなことしかやらないに違いない。いしかわじゅんの辞書にマーケティングという言葉はないらしい。マーケティングで『まじかる☆タルるートくん』を描いた江川達也とは対極の人だ。

まあ、要約すると、激しく頑固で著しく偏った濃い趣味人なのだ。

なんだ、業界の濃い人なんて自分のことじゃないか…と気付いた人は偉い。その通り。これはその濃い人が濃い他人をズバっと料理して読ませるという、どうにも滋味溢れ過ぎなエッセイ集なのだ。文章はまさに軽妙洒脱。だいたいああいう気難しい顔をした人ほど面白可笑しい文章を書くものだ。ひょうきんなお調子者が笑いを作るわけではない。

とりあえず、目次に並んだ著名人を見て、5人以上知っているようなら迷わず買おう。文庫版にはオマケまでついていてお買い得だ。ただし、文庫版オマケ1を読むときは注意が必要だ。

ぼくは電車で吹き出して大変気マズイを思いをした。

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