今井一『「憲法九条」国民投票』(集英社新書)

今井一『「憲法九条」国民投票』(集英社新書)今井一『「憲法九条」国民投票』を読んだ。

この問題に関して、気になりつつもちゃんと知る努力を怠ってきた自分に終止符を打つべく、とりあえず何の下調べもなく本屋で適当に選んだのがこの本だった。これが思わぬ拾い物。端的にいって資料的価値が高い。

この本を、これから投票日までの間にあなたがそれを為すための最初の「参考書」にして下さい。

…と「まえがき」にある。ぼくは買ってしまってからこの文を読んだのだけれど、確かによくできた参考書であり入門書になっていると思う。なんといっても、他人の言説に惜しげもなく多くの紙幅を費やしているところが素晴らしい。著者が幅広く収集した識者著名人たちの九条に関する多様な見解が、要約などの余計な手を入れず、およそ偏りなく大量に掲載されている。2003年の本ゆえ最新のデータとは言えないけれど、各陣営の考え方に関しては、ほぼ出揃っているんじゃないかと思う。

もちろん現憲法の成立過程や解釈の変更過程についても分かりやすく書かれている。その上でどう考えるべきかを問う。著者の主張も一応は書かれているものの、殆どの頁は読者が自分で判断するための材料として提供されている。

なんて良心的な本だろう。

これだけの資料を、これから勉強しようという人間が集めるとなると、かなりの時間と労力を要するはずだ。自分の見解よりも、読者に考えさせることを第一とした執筆態度が実に潔い。

軍備、戦争、安全保障。

その是非を考え、決断するのは他の誰でもない。ぼくたち一人一人だ。誰かに決めてもらうわけにはいかない。気になっていながら何をどう考えていいのかよく分からない。そんな人は、きっとぼくだけじゃないはずだ。

それなら、まずはこういった本を読んでみるのも手だと思う。

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