日明恩『それでも、警官は微笑う』(講談社ノベルス)

日明恩『それでも、警官は微笑う』(講談社ノベルス)日明恩『それでも、警官は微笑う』を読んだ。

このブログでも何度か取り上げている「メフィスト賞」受賞作だ。すなわち、これがデビュー作ということになる。ちなみに著者の名前は「たちもりめぐみ」と読む。姓も名も難しい。

タイトルにもある通り、これは警察小説だ。

ミステリ的な分類ではハードボイルドに近いように思う。謎解き主体の作品ではない。なので、本格寄りの小説が苦手な人でも問題なく楽しめる。新書のカバー折り返し部分に「頑張る警官の物語です」とある。実にその通りの話だった。

福井晴敏といい、日明恩といい、近頃こういう暑苦しい男たちのニーズが高まっているのかもしれない。

厳つくて不器用で真直ぐで頑固な上に滅法頑丈な巡査部長と、ボンボンで優男で記憶力だけは異常に良い矢鱈饒舌な年下の警部補。絵に描いたような取り合わせを字で書いている。この一見コミカルなふたりをツートップに据えながら、話は骨太、甘くない。

頑張る意味や挫けない意志を描いたエンターテイメント小説ながら、単純な勧善懲悪や努力は報われる式の展開を殆ど否定しているところがいい。それでいて、清清しい読後感を残す。巧いと思う。

この凸凹コンビ、どうやらシリーズものらしい。単行本は買い控え中の身なれば、ノベルス化されるのを待って読んでみようと思う。処女作でここまで書ける作家なら、期待してもいいはずだ。

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