重松清『流星ワゴン』(講談社文庫)

books050407.jpg重松清『流星ワゴン』を読んだ。

初めての重松本。坪田譲治文学賞、山本周五郎賞、直木賞受賞と、とにかく大活躍の人気作家だ。もちろん名前は知っていた。ただし本当に名前だけで、どんな作風なのか、ジャンルはどっち方面なのか、そんなことさえ全く知らなかった。だから、この本を手に取ったのも評判を聞いてというわけではない。たまたま駅前の書店で平置きのタイトルに惹かれた。本当にそれだけの理由だった。あまり時間もなかった。解説もあらすじも、帯の惹句すら読まずに買った。

内容について真っ白な状態で読む。

これ、案外珍しいことかもしれない。実際のところ、前評判を聞いて、ついでにさわりくらいは知ってしまってから読むことが圧倒的に多いように思う。今回これほど何も知らずに読めたのは幸運だった。

などと書きながら、以下内容に触れる。核心に触れるつもりはないけれど、未読の人は自分なりの感想を持ってから読んでもらった方がいいかもしれない。

この本の主題は父子の関係と人生のやり直しについてだ。アイデアとしてはタイムスリップものがベースになっている。

タイムスリップとやり直し。

この“バック・トゥ・ザ・フューチャー”的な組み合わせに先入観を持ってはいけない。そこにはすこぶる厳しいルールが設定されている。

ここにこの本の核心とオリジナリティがある。

そして、その「意味」を知るために登場人物たちは悩み苦しみながら前に進もうとするし、ぼくたち読者も一緒になってその「意味」を考えながら読み進むことになる。

決して甘くない現実を描く過程は容赦ない。

読んでいて気が滅入るほどだ。ぼくはその辛さをまるで主人公と共に乗り越えていくような気持ちで読んだ。だからこそ、最後に示される可能性が、希望と呼べそうなものだったことに、心底救われた気がした。そんな風に読ませるなんて生半のことではないと思う。

ぼくにはまだ妻も子もない。それでもこれだけ感情を持っていかれるのだから、主人公と同じような境遇なら尚更だろう。

遠く実家には父があり、自宅には妻と息子がいる。

そんな人は四の五のいわず読む。とにかく必読だ。

related entry - 関連エントリー

trackback - トラックバック

trackback URL > http://lylyco.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/28

comment - コメント

コメントを投稿

エントリー検索