中島らも『砂をつかんで立ち上がれ』(集英社文庫)

中島らも『砂をつかんで立ち上がれ』(集英社文庫)中島らも『砂をつかんで立ち上がれ』を読んだ。

ぼくは割りと適当に本を選ぶ方だ。書店でタイトルを見てとか、文庫なら背表紙のあらすじを見てとか。けれども、本を途切れさせないがモットーのぼくは、日頃からある程度気にかけておかないと、いざ手持ちの本を読了した時に困ることもある。たまたまピンとくる日ばかりとは限らないからだ。

そこで重宝するのが、好きな作家が好きな本。

好きな作家の作品とその作家の読書歴とは基本的に無関係なのだけれど、好きな作家の嗜好にはいくばくかの関心があるし、なんだかんだいっても、どうしようもない本を愛読書にあげる作家なんてそうそういない。少なくとも帯やあらすじよりは信用できる。

『砂をつかんで立ち上がれ』には中島らもが読んだ色々な本や漫画についてのエッセイが沢山収録されている。いわゆる書評とは違って、読み物として楽しめる内容だ。中には文庫用の解説まである。解説文がエッセイの水準に達しているのはさすがただの変人ではない。

お陰でまた読みたい本が増えた。

名前だけしかしらないバタイユやセリーヌ、バロウズといったちょっと異端な面々。現役日本人作家のメジャーどころでは夢枕獏、田辺聖子などなど。実は早速バタイユの『眼球譚(初稿)』を買った。本当はセリーヌ『なしくずしの死』を探したのだけれど、残念ながら近所の書店には置いてなかった。

中島らもを深夜テレビでしか見たことがない人は、彼の文章を読むとビックリするかもしれない。中島らもという人は破天荒だけれど理知的な人だ。考えた末に道を踏み外すタイプともいえる。その挙句に階段を踏み外して死んでしまった。

王の家臣をみんな集めてもハンプティ・ダンプティを元には戻せない。

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